酸・塩基とpH
H⁺のやりとりで理解すれば、pH計算から中和まで迷わなくなる。胃液もレモンも「酸」の話。
なぜレモンは「すっぱい」のか
レモン果汁・食酢・胃液・コーヒー。これらに共通するのは「酸性」という性質だ。
舌が「すっぱい」と感じるのは、水素イオン(H⁺)が味覚受容体を刺激するからだ。つまり「すっぱさ」とはH⁺の存在そのものを味覚で感じていることになる。
酸・塩基の化学は、この H⁺ をどう扱うかの話に尽きる。
アレニウス(1884年):「水に溶けて H⁺ を出す物質が酸、OH⁻ を出す物質が塩基」。シンプルだが、水溶液限定。
ブレンステッド・ローリー(1923年):「H⁺ を渡す物質が酸、受け取る物質が塩基」。水溶液以外にも適用可能。
ルイス(1923年):「電子対を受け取る物質が酸(ルイス酸)、与える物質が塩基」。さらに広い定義。
高校化学では主にブレンステッドの定義を使う。
強酸・弱酸の本質的な違い
酸の「強さ」とは「どのくらい電離するか(H⁺ を放出するか)」で決まる。
| 種類 | 電離度 | 例 |
|---|---|---|
| 強酸 | ほぼ 100% 電離 | HCl・H₂SO₄・HNO₃(この3種は暗記) |
| 弱酸 | わずかしか電離しない | CH₃COOH(酢酸)・H₂CO₃(炭酸) |
| 強塩基 | ほぼ 100% 電離 | NaOH・KOH・Ca(OH)₂ |
| 弱塩基 | わずかしか電離しない | NH₃(アンモニア) |
「強酸・弱酸」は「電離度が大きい・小さい」の話であり、「濃い・薄い」とは別の概念だ。
0.001 mol/L の塩酸(強酸・希薄)と、1 mol/L の酢酸(弱酸・濃い)を比べると、後者の方が H⁺ 濃度が高いこともある。「強酸 = 常に H⁺ が多い」ではない点に注意。
pH の定義と計算
直感的な理解:
pH が 1 小さくなる = H⁺ 濃度が 10 倍になる
| pH | [H⁺] | 例 |
|---|---|---|
| 0 | 1 mol/L | 濃塩酸 |
| 1 | 0.1 mol/L | 胃液 |
| 3 | 10⁻³ mol/L | レモン果汁 |
| 7 | 10⁻⁷ mol/L | 純水(中性) |
| 11 | 10⁻¹¹ mol/L | 家庭用アンモニア水 |
| 14 | 10⁻¹⁴ mol/L | 濃水酸化ナトリウム水溶液 |
水のイオン積:
塩基のpHを求めるときは、まず [OH⁻] を求め、Kw から [H⁺] を逆算する:
パターン1:強酸のpH
0.010 mol/L の HCl のpH は?(完全電離)
パターン2:強塩基のpH
0.010 mol/L の NaOH のpH は?
パターン3:希釈したときのpH
pH = 1の塩酸を水で100倍に希釈した。pHは?
注意:強塩基を極端に希釈しても pH は 7 以下にならない(純水が pH = 7 だから)。
中和反応
酸のH⁺と塩基のOH⁻が反応して水になる:
完全に中和するとき:
強酸 × 強塩基の中和点 → pH = 7(水の中性と一致する)
弱酸 × 強塩基の中和点 → pH > 7(生成した塩が加水分解して塩基性になる)
強酸 × 弱塩基の中和点 → pH < 7(生成した塩が加水分解して酸性になる)
「中和したから pH = 7」という思い込みは捨てること。どの酸・塩基の組み合わせかで中和点のpHが変わる。
人間の血液のpHは 7.35〜7.45 という狭い範囲に保たれている。これが 0.1 でも外れると体調不良が起き、0.5 外れると生命の危機になる。
この精密なpH管理を担うのが緩衝液の仕組みだ。血液中の炭酸(H₂CO₃)と炭酸水素イオン(HCO₃⁻)が、酸が入ってきても塩基が入ってきても吸収してpHの変化を最小限に抑えている。
スポーツで乳酸が大量に発生しても血液のpHが劇的に変わらないのは、この緩衝システムのおかげだ。
酸塩基のまとめ
- 酸 = H⁺ を渡す、塩基 = H⁺ を受け取る
- 強酸3種:HCl・H₂SO₄・HNO₃(丸暗記)
- pH = -log[H⁺](pH1下がる = H⁺が10倍)
- Kw = [H⁺][OH⁻] = 10⁻¹⁴(25°C)
- 中和:naVa × a = nbVb × b
- 中和点のpH:強×強=7、弱酸×強塩基>7、強酸×弱塩基<7
// quiz
確認問題
Q1.ブレンステッドの定義で「酸」はどれか?
Q2.pH = 3 のHClのH⁺濃度は?
Q3.強酸と強塩基の中和点pHは?